夜の騎士のあれこれ噺

世の中にはあれ?これ?と思うことがいっぱい。

「蜷川幸雄」さんの「蜷」という漢字?

今朝のTVの情報番組が先日他界した演出家「蜷川幸雄」さんの通夜が昨日執り行われたことを
報じてました。

ワタシは蜷川さんの名字に使われてる「蜷」という漢字に、「蜷川」さん以外にほかでお目にかかった
ことがありません。    みなさんはいかがですか?

漢字は「象形文字」ですから「蜷」にも何かの意味があるはず。

「虫」偏なので昆虫の中に「になむし」って云うのがいるのかな?と思ってナンデモ知りたがりのワタシは
さっそくネット検索してみました。ネットがない時代でしたら調べるのに大変な苦労があったはずなのに
ネットだと簡単すぎて拍子抜けしてしまうほどです。

「蜷川」さんの「蜷」という字、よ~く見ると右側の作りの方が巻の「己」ではなく「厄」の中に使われてる
ものになってます。現在は虫偏に巻が使われてるそうです。

で、「蜷」の意味は「何かを巻きつけようとする小さな生き物」とか「渦巻きの形をしている小さな生き物」
ということから「巻貝」を意味するそうです。

また日本全国の川に生息するゲンジボタルの餌として有名な巻貝「カワニナ」も、ただ「蜷」と呼ばれてる
そうです。

この「蜷」と云う言葉は「古事記」や「日本書紀」、「万葉集」に登場するほど歴史がある言葉で
万葉集にもこんな歌が詠まれてるそうです。

    *鴨じもの 浮き寝をすれば 蜷の腸 か黒き髪に 露そ置きにけ
                     (になのわた)(ぐろ)
      (作者不詳:  万葉集 巻十五  三六四九)

      意:浮き寝をしていると、(蜷の腸のような)黒髪に霜が降りている。

「蜷」は必ず「蜷の腸  か黒き髪に」(蜷の腸のように黒い髪の毛)と詠まれていて巻貝そのものに
ついて歌われておらず、「蜷」の内臓が黒いことを、黒髪を強調するための枕詞として用いられてました。

古代遺跡の「貝塚」にみられるように、貝は古代人の重要な食材でしたから巻貝の腸(内臓)の黒さ
をみて、その黒さが、いかにも黒髪のようだと感じていたんでしょう。

本日の夕食には巻貝の代表格「サザエの壺焼き」でも食べながら、「蜷の腸」の黒さを確認し
古代の日本人の暮らしに思いを馳せたらいかがでしょうか?

日本人は古代から風流心を持っていたんですね。

「蜷川」さん通夜の報に触れ、思わぬ勉強をした本日でした。