得るため読んでいた「売り渡される食の安全」を読み終わり
ました。この本の最終部で遺伝子組み換えの種子を使わない
「有機栽培」の海外主要国と日本の現状が報告されてます。
長くなるので本日は海外主要国、明日に日本の現状に分けて
紹介します。(山田正彦著「売り渡される食の安全」より抜粋)
★米国 ・米国全土で拡大の一途をたどってきた遺伝子組み換え
作物の栽培面積は、2014年の7,310万ヘクタールから2015年
には7,090万ヘクタールに、わずかであるが初めて減少した。
3人の男の子を持つ主婦「ゼン・ハニーカット」さんが立ち上げ
主導する「マムズ・アクロス・アメリカ」の草の根活動によって
スーパーに並ぶ野菜、果物、食パンやケーキ類、牛乳やチーズなど
の乳製品、様々な種類のジュースやビールやワインなどのアルコール
類,ドレッシングやオリーブ油、マヨネーズやマスタードといった
調味料、様々なサプリメント類、さらに洗剤まで「NON GMO」
か「ORGANIC」と表示されている。
・「ORGANIC」を表す有機栽培のおもな条件は①化学的に合成された
肥料および農薬を使用しない②農薬が他の農地から飛来しないよう
措置をとる③種まき、もしくは植え付ける2年以上前から化学肥料や
農薬を使用していない土壌で栽培したもの。
・オーガニック食品をは米国でも割高になるのに,ゼンさんがその点を
いとわない理由を山田さんが尋ねた時の答え「オーガニック食品や
非遺伝子組み換え食品を食べ始める前は、父と夫、3人の子供たち、
そして私の6人で年間に1万1000ドル(約120万円)以上の医療費が
かかっていました。それが今では900ドル(約10万円)で済みます。
食費に高いお金をかけても、医療費に使うと思えば安いものだと
思っています。」
★EU加盟国(28か国)EU加盟28か国における有機農業の取り組み
面積は、全耕地面積の約7%に当たる約1260万ヘクタール、2015年
からの5年間で約25%の伸び率を示し、大規模経営から家族経営へ、
輸出重視から有機栽培へ急速にシフトしている。
・レストランなどで提供されるメニューにも遺伝子組み換え作物の表示
が義務付けられている。どのような過程を経て作られたかを明確に示す
トレーサビリテイ(過程追跡)も同様で、使用されたすべての遺伝子
組み換え原料を表示しなければならない。
・2011年にドイツ,スウエーデン、ポーランドが遺伝子組み換え作物の
栽培中止を決め、2014年にはEU最大の穀物生産国フランスが遺伝子
組み換えトウモロコシの栽培を全面的に禁止、2015年にはルーマニアが
2016年にはスロバキアも遺伝子組み換え作物の栽培から撤退した。
★ロシア 国土面積が約1710万平方キロメートルと世界最大のロシアでは、
上院で2016年8月に、遺伝子組み換え作物の生産および輸入を全面的
に禁止する法案が可決・成立している。
・2015年に実施された世論調査では、国民の82%が「遺伝子組み換え
食品は有害である」と回答している。
★中国 約13億9千万人と世界最大の人口を擁する中国は国民を扶養
するため、農作物の収穫量を増やす目的から.遺伝子組み換え技術の
導入に積極的で研究は1980年代から取り組んできた。実際に綿を
中心に遺伝子組み換え作物の栽培も行われてきたが、栽培面積は
2013年の420万ヘクタールがピークで、2015年は370万ヘクタールに減少。
・遺伝子組み換え作物の研究は奨励し、公的な投資も惜しまない一方で
栽培や輸入.及び流通は制限するという、二律背反の政策を長くとって
おり2017年7月以降はすべての.遺伝子組み換え作物の輸入も禁止
したが、2019年1月に対立する米中貿易協議に先駆ける形で、飼料用の
遺伝子組み換え大豆やトウモロコシなど5品種の輸入を解禁した。
・その間に有機農業は急成長を遂げていて、2016年の総取り組み面積は
約228万ヘクタールに到達。米国の約203万ヘクタールをすでに追い
抜いた背景には、国民の間で食の安全に対する意識が年々高まって
いることがうかがえる。
★韓国 人口約80万人の清州(チュンジュ)市では、同市内にある合計
180の小学校、中学校、高校に通う約11万人の児童や生徒全員に、
オーガニック食材で作られた給食が毎日無償で提供されており、あと
数年もすれば、ほぼ全ての小・中・高校で実現できる見通しである。
・これは韓国の憲法で謳われている教育の無償化では、学費や教科書.
だけでなく、学校給食の無償化も保障されていることによる。
・韓国でもオーガニック食材は価格が高い。清州では市議会で
条例を制定したうえで、学校給食の無償化とオーガニック食材化.を
実現させた。市が通常の食材との差額を補填し、なおかつ無償化
するために、清州市では予算を組んで日本円にして年間で約110億円
を負担している。
・韓国でもオーガニック食品と認定されるためには厳しい検査をクリア
しなければいけない。土壌だけでも日本の10倍にあたる300種類もの
検査があり、しかも基準は年々厳しくなっている。しかし、高額な
検査費用を市町村が負担しており、認定されなかった場合のみ自己負担
となるシステムである。
★世界で加速する有機栽培取り組み面積(2019.6.16東京新聞掲載)
国名 有機農業取り組み面積 全耕地面積の対する割合(%)
(ヘクタール)
イタリア 179万6000 14.5
スペイン 201万9000 8.7
ドイツ 125万1000 7.5
フランス 153万8000 5.5
イギリス 49万 2.9
アメリカ 203万1000 0.6
中国 228万1000 0.4
日本 2万3000 0.5