夜の騎士のあれこれ噺

世の中にはあれ?これ?と思うことがいっぱい。

ゲノム編集の神話(宣伝)と現実(宣伝のまやかし)

食品安全問題のフリーの立場での研究者「印やく智也」さんが、

厖大な科学論文を踏まえてゲノム編集食品に関する企業側の宣伝が

事実とは大きく異なっていることを検証した、2021.年2月に

欧州議会で報告された「ゲノム編集 神話と現実」というガイド

ブックの「日本語版」(48P)を無償で入手できるよう公開して

くれましたので、早速プリントアウトしてみました。

 

EUでは2018年にゲノム編集は従来の遺伝子操作(遺伝子組み換え)と

同等のリスクを持ちうるとして従来の遺伝子操作生物規制にかける

必要があるとする判決が欧州裁判所によってだされていますが、

その後、バイオテクノロジー企業(遺伝子組み換え企業など)による

圧力が激しく、この決定を覆す動きが進んでいるので、バイオ

テクノロジー企業の主張が科学的でないことを示す目的でこのガイド

ブックが作られました。

 

一方米国ではトランプ前大統領が就任直後の2017年から、ゲノム編集

生物の規制のない流通をめざす方針を打ち出し、ゲノム編集食品推進を

各国に求める方針を出したことに対応し、日本政府の取り組みは加速し、

2020年12月に最初のゲノム編集作物、サナテックシード社の「シシリアン

ルージュハイキャバ」が届け出され、2021.年5月にはその苗が希望者

4000人に配布され、9月にはその青果物のオンライン販売が始まり

ました。さらに2022.年からは福祉施設、2023年からは小学校に苗を

配る計画を苗の販売元のパイオニアエコサイエンス(株)が発表しています。

日本ではすでにゲノム編集ジャガイモや小麦の栽培実験も始まっております。

さらに、リージュナルフィッシュ(株)によるゲノム編集マダイ(9月)、

トラフグ(10月)も届けられ流通可能になっていますが、植物以外の

ゲノム編集食品を流通可能にしているのは日本だけで、今後サバやエビなども

出てくる可能性があり、日本が世界で「突出」する動きをしています。バイオ

テクノロジー多国籍大企業とそれに協力する米国政府の言うままに従う

日本政府(農水省)の動きに対して、ゲノム編集に批判的な情報が日本では

得にくい状況のなかでしっかりした科学的根拠を持つ情報を伝えなければ

大変な事になるとの思いから、印やくさんが考えこのガイドブックの

]無償公開に踏み切ってくれました。

 

このガイドブックは8つの章からなり、それぞれの章が最初にバイオ

テクノロジー企業による宣伝文句「神話」と、科学者の研究などから

明らかになった「現実」(宣伝のまやかし)が比較されます。その後、

その解説が詳細に述べられる構成になっています。少し長くなりますが

「各章の見出し」だけピックアップして紹介しておきます。

☆第1章 ゲノム編集は遺伝子工学であり、品種改良ではありません。

  【神話】ゲノム編集技術は、「新しい品種改良技術」、「精密品種

      改良」、または「品種改良のイノベーション」です。

  【現実】技術的にも法的にも、ゲノム編集技術は遺伝子操作技術であり、

      品種改良方法ではありません。

 ☆第2章 ゲノム編集は正確ではなく、予測できない遺伝的エラーを引き

      起こします。

  【神話】CRISPR/Casなどのゲノム編集ツールは、正確かつ制御された方法で

      ゲノムに変化をもたらし、予測可能な結果をもたらします。

  【現実】ゲノム編集は正確ではなく、意図された遺伝的変化に加えて、

      予測出来ない結果を伴う多くの遺伝的エラーを引き起こします。

☆第3章 ゲノム編集は、自然界とは異なる遺伝子変化を引き起こします。

  【神話】ゲノム編集によってもたらされる変化は、自然や突然変育種で

      起こり得る変化と同じです。

  【現実】ゲノム編集は、自然や突然変異育種で起こるものとは異なる

     遺伝的変化を引き起こし、その結果がどうなるか充分分かっていません。

☆第4章 ゲノム編集には危険があり、」その産物には安全ではない可能性

     があります。

  【神話】 ゲノム編集の精度の高さと制御が効くので、ゲノム編集は

       安全設計です。

   【現実】ゲノム編集の意図しない結果はリスクにつながりますが、」

       そのリスクはまだ充分把握されていません。

☆第5章 ゲノム編集された食品は検出可能です。

   【神話】ゲノム編集された食品は、従来の品種改良で開発された

       食品と区別できません。

   【現実】遺伝子変更の情報が得られれば、ゲノム編集によるすべての

       食品を検出する方法が開発できます。

☆第6章 遺伝子操作技術は大企業が保有し、支配しています。

   【神話】 ゲノム編集、特にCRISPRツールは、公的資金で運営されて

        いる研究機関や小規模な企業を含む、何十万人もの科学者

        の手に遺伝子工学のチカラをもたらします。

   【現実」 農業用のゲノム編集技術は,すでに種子や農薬の市場を

        支配している多国籍企業支配下にあります。コルテバ社は、

        農業分野におけるCRISPR特許の主要な管理者となっています。

 ☆第7章 ゲノム編集は、望ましい結果を得るための迅速かつ確実な品種改良

      方法ではありません。

   【神話】 ゲノム編集は、従来の品種改良よりも迅速に目的の形質を作り

        出せます。

   【現実】 ゲノム編集された食品を市場に出すには、その規制以外にも

        多くの長いステップがあり、望ましい形質を達成するには従来の

        品種改良の方が成功します。

☆第8章 ゲノム編集は、リスクとコストが高く、食や農の問題に対する

      成功した実績のある解決策から遠ざかってしまいます。

   【神話】 ゲノム編集は、人や環境にとってより良いものを作るために

        必要なものであり、それを使わせないことは倫理的にも非難

        されるべきです。

   【現実】 私たちは、成功した実績のある解決策である従来型の品種改良や

        アグロエコロジーの規模を拡大する必要があり、ゲノム編集は

        その道を進める上で、コストのかかる妨げになります。